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◎伝承者 岸本松江さん
(久美浜町須田・大正11年生まれ)
久美浜町須田では、旧暦10月の亥の日に餅をついて亥の子を祝う。この日は、田の神が一年の仕事を終えて家に戻られる日といい、家人は新米を用いて白餅を作り田の神をもてなすのである。田んぼから家に戻った神は臼(うす)でひと休みし、家のタカ(※)に上がって一冬を越し、そして春になると再び田に戻るのだという。当地では、干支(えと)は子からはじまり亥に終わることから、俗に「亥の子」は一年の締めくくり、新年を迎える重要な折り目と伝わる。作物の稔りを一年のサイクルとした「稔(とし)」の観念がうかがえる。
亥の子の餅は10cm程の白餅で、昔は一斗七臼で200個程の餅を家内じゅうでつくった。「やったりとったり亥の子の餅かな」といい、嫁には重箱につめた餅を持って里帰りさせ、しばらくは農作業も休んだ。帰りにはお返しにと、亥の子餅をもらうのが古くから慣習だった。
家では亥の子の夜にぜんざいに餅を入れて食べ、神前や床の間、仏壇にも餅をお供えし、無病息災を願った。
※:薪や稲藁などを保管する屋根裏のこと。
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